恋愛セミナー24【胡蝶】第二十四帖 <胡蝶 こちょう> あらすじ源氏は春の盛りを楽しもうと、六条院の池に船を浮かべて、その上で宮廷の楽人たちに音楽を演奏させました。 たくさんの貴人がやってきて、玉鬘のことを気にかけています。 玉鬘が姉であることを知らない内大臣の息子・柏木の中将もその一人。 また、正妻を亡くして三年たつ兵部卿宮(ひょうぶきょうのみや)も心そぞろ。 源氏は弟である兵部卿宮が結婚を望んでいるのを知って、盃を何度も空けさせるのでした。 夕霧は弟として真面目に対していますが、玉鬘は心苦しいばかり。 一方で実の弟に恋文をもらうのが情けない思いですが、はやく父・内大臣に伝えて欲しい、とは言いません。 源氏を頼りにしている様子が母・夕顔に似ていて、そのうえに内大臣の才能のきらめきも見えます。 源氏は玉鬘への恋文が増えたのを喜んで、何度もやってきます。 兵部卿宮の文を見ておもしろがったり、柏木の文字の見事さに誰なのかをたずねたり。 「人を選ばなくてはいけない。兵部卿宮と髭黒右大将(ひげくろのうだいしょう)二人には返事をするように。」 女房の右近にはこんな意見をしました。 源氏はそのあとで「兵部卿宮は浮気で何人もの愛人がいる。髭黒右大将は正妻が嫌になったので あなたと結婚したがっている。あなたの本当の気持ちは出しにくいだろうが私を親と思って。」と玉鬘には言います。 「親はいませんでしたのでよくわかりませんの。」という返事に 「では養父の私を本当の親として、この深い気持をわかってください。」と源氏は隠れた恋情を伝えますが 玉鬘は気づいていないようで、がっかりしています。 源氏は紫の上に「玉鬘は頭もよくて人から好かれる娘だ。」と話しました。 「頭はよい方でも、あなたに心を許すなんて。私の時のことを思い出しますわ。」と紫の上。 気持ちを見透かされてしまったので源氏は口をつぐんでしまいます。 ある雨の降った日の夕暮れ、また源氏が玉鬘のもとをたずねました。 急な訪れに油断していた玉鬘をみて、その美しさに夕顔を思い出して涙する源氏。 ついに手をとって恋心を打ち明けてしまい、自分の衣をすべり落として困惑する玉鬘の横に添い寝しました。 あまりに長い訪問を女房たちにどう思われるかと、玉鬘は情けなく思います。 「他の人には気づかれないようにしなさい。」と告げて、源氏は帰りました。 ただの添い寝ではあるものの、玉鬘は男性がこれより近づくことがあるとは思えません。 源氏からの歌には「なぜ何かあったような顔をしているのでしょう。」とあり、憎らしいのですが 返事を出さない訳にはいかないので「拝見しました。気分が悪いのでお返事は失礼します。」とだけ書きました。 その後は源氏はもっと頻繁にやってきて何度も迫るので、玉鬘は寝込んでしまいそうです。 世間や父・内大臣にわかったらどう思われるかと悩みはつきません。 兵部卿宮、髭黒右大将、そして柏木も恋文を書き続け、思いを募らせるのでした。 1 源氏と玉鬘 養父、娘分に恋を打ち明ける。 2 柏木と玉鬘 実の姉弟 3 兵部卿宮と玉鬘 見ぬ相手に思いをかける。 娘に恋する気持ちは父親には多少なりともあるでしょう。 まして血の繋がりのない娘分が昔の恋人の忘れ形見だったらなおさら。 妻、あるいは恋人が、より若く美しく、やや年を経た自分の前に何も知らぬげにあらわれる。 これは心迷う対象になりそうです。 さらに源氏は、自分の庇護のもとに囲った娘で同性の気を引き、あたふたする様を高見から楽しんでいます。 いくら政務が暇になったとはいえ、かなり悪趣味。 源氏にとっては、壮麗な六条院の娯楽のひとつなのでしょう。 そのうえで、皆の前にぶら下げた、自分の言いなりになるしかない娘に迫って困らせ、案外手ごたえがあると思って喜ぶ。 老醜に近い感じが漂います。 源氏の行動はこれからどんどんエスカレートしてゆきます。 |